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コラム:「選択肢を持つ力」が企業価値を左右する ――UAEに学ぶ

コラム:「選択肢を持つ力」が企業価値を左右する ――UAEに学ぶ

<コラム執筆者>
前田 雄大 脱炭素専門エネルギーアナリスト (Green Innovator Project 実行委員会 アドバイザー)

ホルムズ海峡を巡る緊張は、多くの企業に改めて重要な現実を突き付けた。それは、サプライチェーンリスクとは単なる調達部門の課題ではなく、経営そのものの課題だということである。

今回注目されたのがUAEの対応だ。UAEは一時停止していたナフサ輸出を、オマーン沖でのSTS(船舶間積み替え)によって再開した。さらに以前からフジャイラ港へのパイプラインを整備し、ホルムズ海峡を経由しない輸出ルートも確保している。

重要なのは個別施策ではない。危機が起きてから対応したのではなく、危機が起きる前から複数の選択肢を準備していたことにある。エネルギー安全保障とは、危機発生時の対応力ではなく、「平時にどれだけ選択肢を持てるか」によって決まるのである。しかし、UAEの戦略性はそれだけではない。

近年のUAEは巨額投資によって原油生産能力を拡大してきた。一方で、OPECプラスの生産枠は、その能力を十分に活用する上で制約にもなり得る。世界的に脱炭素が進展し、長期的な石油需要の不透明感が高まる中で、UAEは「需要があるうちに市場を取りに行く」という姿勢を強めている。OPECとの距離感を見直し、自国の裁量を高めようとする動きも、その文脈で理解できる。
つまりUAEは、防御だけを考えているのではない。平時から選択肢を準備しながら、将来の環境変化を見据え、攻めの一手も打っているのである。

これは企業経営にもそのまま当てはまる。
筆者自身、この数年、講演や企業との対話の中で、中東リスクやホルムズ海峡リスクについて繰り返し発信してきた。しかし今回の緊張の高まりを受けて改めて感じるのは、そのリスクを認識していた企業と、実際に準備まで進めていた企業との間には大きな差があるということである。

リスクは、知っているだけでは意味がない。代替調達先を持っているのか。物流ルートを複線化しているのか。危機が顕在化したとき、その差は企業競争力の差として表れる。
さらに重要なのは、今回のホルムズ危機を単発の出来事として捉えないことである。地政学的な分断の進展に加え、2030年代に向けては気候変動の影響拡大も予想される。物流寸断、資源制約、エネルギー価格変動など、企業を取り巻く不確実性はむしろ高まっていく可能性が高い。

だからこそ企業に求められるのは、目先の効率性だけを追求する経営ではない。どこに依存し、何が止まれば事業が止まるのかを把握し、自社のリスクを可視化することが重要になる。
GXもまた、その文脈で捉えるべきであろう。再エネ、省エネ、蓄電池、資源循環といった取り組みは、脱炭素だけでなく、外部依存を減らし、経営の選択肢を増やす手段でもある。

UAEが示したのは、単なるBCPの重要性ではない。変化の兆しを捉え、選択肢を準備し、必要なタイミングで勝負手を打つことの重要性である。ホルムズ危機は一過性のニュースかもしれない。しかし企業経営にとって本当に問われているのはその先にある。2030年代を見据え、自社はどのような未来を想定し、どのような選択肢を準備しているのか。その問いに向き合うことこそが、GX時代の経営戦略の出発点になるだろう。

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