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コラム:「ナフサ危機」が突きつけたGXの本質 ――“脱炭素”から“経済安全保障”の時代へ

コラム:「ナフサ危機」が突きつけたGXの本質 ――“脱炭素”から“経済安全保障”の時代へ

<コラム執筆者>
前田 雄大 脱炭素専門エネルギーアナリスト (Green Innovator Project 実行委員会 アドバイザー)

ホルムズ海峡を巡る緊張は、日本企業に改めて重要な現実を認識させた。それは、「エネルギー・資源問題」と「サプライチェーン問題」は、もはや切り離せないということだ。

原油危機というと、多くの人はガソリン価格を思い浮かべる。しかし、今回実際に揺らいだのは、“燃やす”側だけではない。ナフサ供給への不安を通じて、化学製品、樹脂、包装材、電子部品、医療資材など、ものづくり全体に影響が波及した。つまり、GX時代において問われているのは、単なるエネルギー価格ではなく、「社会や産業を支える基盤をどう維持するか」という点なのである。しかも日本の難しさは、単に「中東依存が高い」ことではない。日本の製油・化学インフラそのものが、中東産の“中質油”を前提に最適化されている点にある。代替調達といっても、軽質油・重質油では性質が異なるため、物流・製油・化学工程まで含めた高度な調整が必要になる。

一方で、今回改めて浮き彫りになったのは、日本企業や物流・エネルギー産業の底力でもある。代替原油の確保、ブレンド調整、航路確保など、現場では官民が総力戦で社会インフラを支えている。こうした「擦り合わせ力」や現場対応力は、日本の大きな強みだ。ただし、本質は「代替調達を頑張ること」ではない。世界が分断へ向かう中、外部依存度が高い構造そのものが、経営リスクになり始めている。エネルギー、素材、食料、半導体――あらゆる領域で、「どこかに過度依存すること」が企業価値を左右する時代に入った。

だからこそ、GXを単なる“環境対応”として捉えるだけでは不十分だ。再エネや蓄電池、オンサイト電源、EVのエネルギー活用は、脱炭素だけでなく、「外部依存を減らす経済安全保障」としての意味合いを強めている。さらに重要なのが、資源循環である。国内で回収・再利用できる資源を増やすことは、単なるリサイクルではなく、「海外資源への依存を減らす戦略」そのものになりつつある。実際、世界では再エネや蓄電池が「最も早く、安く増設できる電源」としてあらためて評価されている。GXは理想論ではなく、コスト、安全保障、供給安定性を同時に成立させる経営インフラへと変わり始めているのだ。

そして、まさにこの領域こそ、日本企業が強みを発揮できる分野でもある。省エネ、高効率化、素材技術、資源循環、現場改善、サプライチェーン管理――日本企業が培ってきた強みは、分断と不安定化の時代において、むしろ価値を増している。危機が起きるたびに、高いコストを払って外から調達し続けるのか。それとも、自らの構造を少しずつ変えていくのか。GXの本質は、いまや「環境対応」ではなく、「自立性をどう高めるか」という問いへ移り始めている。

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