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Green Innovator Academy(以下GIA)は、「未来を自らより良く変えていこうとするイノベーターの育成」を目的に、2021年に開講しました。企業の若手リーダーやベンチャー企業のCEO、省庁・自治体職員、学生など、多様なバックグラウンドを持つ人材が集い、環境・GX領域の第一線で活躍しています。
エネルギー問題の解決が、個人の意志と行動力によって切り拓かれる時代。再生可能エネルギーへの転換や地下資源依存からの脱却は、技術・政策・社会が複雑に絡み合うテーマであり、その全体像を捉えながら実装へと踏み込める人材の重要性は、増す一方です。こうした分野において、理工学的な知見と社会科学的な視点を横断し、現場の課題と向き合い続ける若い挑戦者たちの存在感は、着実に高まっています。
今回は、GIA第2期生として参加し、物理学の探究から浮体式洋上風力発電の国際コンテストへと活躍の場を広げた井野嵩才さんにお話を伺いました。名城大学から広島大学への再入学、そして九州大学大学院への進学へ。「誰かのせい」で思考を止めず、エネルギー問題の根本解決を自らの使命として追い続ける歩みから、次世代の環境人材に求められるイノベーターマインドと行動力を探ります。
PROFILE
井野 嵩才(Ino Takatoshi)氏
九州大学工学府 海洋エネルギー資源工学研究室
広島大学 総合科学部 物性科学授業科目群 卒業。
名城大学理工学部に入学後、「工学だけではエネルギー問題を正確に見ることが出来ない」という思いから広島大学総合科学部へ再入学。物理学専攻として理工学的な視座を養う傍ら、環境経済学や社会学といった隣接分野の知見も深める。2026年4月からは九州大学大学院へ進学し、洋上風力発電の研究に着手予定。
きっかけは大学内での偶然の出会いでした。上下水道に関する講演会で、積極的に質問をしている学生がいたことが印象に残り、気になって声をかけたところ、その方がGIAの1期生だったことが始まりです。
私自身、大学入学以前からエネルギー分野に強い関心があり、知識をさらに深めたいという思いを持っていました。それに加えて、同じ熱量で環境問題について考え、取り組む仲間に出会いたいと考え、参加を決意しました。
GIA全体を通して最も印象に残っているのは、仲間と取り組んだ時間の楽しさです。特に、私たちのチームでは、島根県雲南市における焼却炉の老朽化をめぐる課題に対して政策提言を行いました。
提言の軸としたのは、重量が大きく、燃焼に多くの熱エネルギーを要する生ごみの減容です。その解決策として、コンポストの大規模な普及に着目しました。検討にあたっては、過去事例の調査や試算といったデスクトップリサーチにとどまらず、自主的に雲南市でフィールドワークを実施し、実際にコンポストの製作・運用にも取り組みました。
こうした実践を通じて、政策提言の質を高めることができたと感じていますし、同時に非常に印象深い経験として心に残っています。

GIAで強調されている「イノベーターマインド」は、私の考え方を大きく変えるきっかけになりました。プログラムを通じて、「政府が規制しないから」「企業がやめないから」といった理由に目を向けて現状を変えられない原因を探すのではなく、「自分自身がその課題を突破できる解決策を持ってこよう」という意識を強く持つようになりました。
また、産官学といった幅広いセクターの専門家に気軽に質問できる環境があったからこそ、それまで環境問題の「原因」だと捉えていた事柄の裏側には、簡単には変えられない理由があることも実感しました。
だからこそ、誰かや何かのせいにして思考を止めるのではなく、「では、何ができれば、その原因を、誰も取りこぼすことなく変えられるのか」と考えるようになりました。
現在の専攻は環境分野に直接関わるものではありませんが、不規則系物理学と呼ばれる、液体やアモルファスといった周期的構造を持たない物質を扱う研究室に所属しています。物理学を選んだのは、数理的な素養を身に付けたいという思いからで、現在の研究室については純粋に興味を惹かれたことがきっかけでした。
また、実践的な取り組みとしては、「フローティング・ウィンド・チャレンジ」という、フランスで開催される浮体式洋上風車の設計コンテストに参加しています。先日、フランスでの実海域テストを行う本選考への進出が決定し、現在はコンテストに向けた風車の製作に取り組んでいます。

GIAでの経験は、私の環境分野における活動の「幹」になっていると感じています。GIAで出会った友人に誘われてイベントに参加し、そこで新たに出会った方からアルバイトを紹介していただくなど、これまでの活動の多くは、振り返るとGIAを起点に広がってきました。
現在でも、アルムナイ同士で環境やエネルギーについて議論する機会が多く、会いたい方に繋いでもらうこともあります。また、アルムナイの数が増えるにつれて、学習会や講演会の場で偶然再会することも増えてきました。
今の自分に大きな影響を与えてくれたGIAには、心から感謝しています。

大きく遠い目標ではありますが、私はこの人生を「エネルギー問題の解決」という夢の実現のために使いたいと考えています。
私の考える「解決」とは、化石燃料や核燃料、希少鉱物を含む地下資源に依存せず、すでに採掘された資源のみを用いて、世界中の人々が文化的な生活を送るために必要なエネルギーを安定的に供給できる社会を実現することです。
もちろん、非常に困難な目標であると認識していますし、気候変動が激甚化する中で、早期の対策が求められている状況でもあります。そのため、まずは化石燃料に焦点を当て、カーボンニュートラルなエネルギー供給の実現を目指すことを、直近の目標としています。
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