脱炭素社会の実現を牽引する次世代のイノベーター育成プログラム「Green Innovator Academy」の第4期は2024年8月に開講、学生プログラムと社会人プログラムの2つを行ないました。学生プログラムには今期は全国の大学/大学院から約60名が参加し、社会人プログラムには企業や官公庁、自治体の職員、約50名が参加しました。12月21,22日には最終成果発表の場としてGreen Innovator Forumを開催しています。
本記事では、1~4期の学生受講生を対象としたフィリピンでのフィールドワークの様子を紹介します。
<1日目>
訪問の初日は、アジア開発銀行(ADB)を訪れました。まず、Executive DirectorをはじめとするADBで活躍されている日本人の皆さまとともに昼食を取りながら意見交換を行いました。
昼食後は、Water and Urban Development Sectorの皆さまとWaste Managementに関する議論を深める機会を持ちました。
代表の坂野よりZero Wasteに関する講義を行いました。日本での取組の現状や課題、持続可能な解決策についての意見を交わし、アジア各地でWaste Managementの分野において活躍されているADBの皆さまと、具体的な課題や解決策について活発にディスカッションを行い、情報を共有しました。
また、Education Sectorの皆さまとも面会し、Green Innovator Academyの取り組みについて詳しく紹介しました。この場では、アカデミーの内容や、持続可能な社会を実現するための人材育成について話し、今後の協力の可能性について意見を交換しました。
<2-3日目>
2日目と3日目は、マニラから車で約2時間の場所にあるMasungi Georeserveを訪れました。この自然保護区は、フィリピン・リサール州の熱帯雨林に広がるエリアで、1996年から伐採によって荒廃した森林を再生する取り組みが続けられています。現在も違法伐採や違法採掘、不動産開発等の脅威と戦いながら、生態系の回復に尽力している場所です。
2日目は、Geotourismの一環として実施されている「Discover Trail」に参加しました。このトレイルでは、壮大な岩山や生い茂る森林を歩きながら、どのように森の生態系が守られ、生物が戻ってきたのかを学びました。道中では、野生動植物の観察や、森林再生の具体的な取り組みについての説明を受け、地域の現状を肌で感じる機会となりました。
さらに、Masungi Georeserveのスタッフから、保護区で行われている最新のプロジェクトや直面している課題について詳しく話を伺い、参加者全員で意見を交わしました。Green Innovator Academyの卒業生たちも、それぞれが発見したことや感じたことをシェアし、環境保護についてのディスカッションを深めました。
3日目は「Legacy Trail」に参加し、より実践的な森林再生活動に携わりました。
過去の大規模な伐採によって生態系が崩れ、枯れてしまった川や荒れ果てた森を実際に歩きました。その後、保護活動の一環として、植林された苗木が健やかに育つよう、周囲の不要な草を取り除く作業にも参加しました。
土地が再生しつつある様子を間近で見ながら、地道な努力がどのように森の回復につながっているのかを実感する貴重な時間となりました。Masungi Georeserveが現在も直面している課題は多いものの、一歩ずつ確実に森の再生が進んでいることを感じ、環境保護の大切さを改めて認識する機会となりました。
<4日目>
最終日には、GAIAを訪問しました。GAIAは、直線的で資源を使い捨てる経済モデルからの脱却を目指し、持続可能で循環型のシステムへの移行を推進する国際的な団体です。具体的には、地域コミュニティと連携しながら政策立案や財政見直しを提言し、調査・研究を通じて科学的な根拠に基づいた情報を発信するとともに、社会運動を活性化させることで都市における持続可能な解決策を確立することに取り組んでいます。特に、廃棄物の焼却処理を削減するための施策やゼロ・ウェイストを実現するための手法の開発、プラスチック汚染への対策、再生可能エネルギーの導入と蓄電技術の向上、さらには気候変動への具体的な対応策に力を入れています。
今回の訪問では、GAIAのスタッフから彼らの主要な取り組みについて詳しく話を伺い、特にZero Waste Academyに関するプログラムの詳細について説明を受けました。私たちは、日本国内で進められているゼロ・ウェイスト政策やGreen Innovator Academyについても紹介し、GAIAの活動とどのように相互補完的な協力が可能かについて意見を交換しました。
単なる情報共有にとどまらず、具体的な協働の可能性について議論を深め、今後の連携の方向性を模索する有意義な時間となりました。
またZero Waste Academy卒業生の営むBack to Basics Ecostoreを訪れ、Zero Waste活動の実践も見学しました。
フィールドワークを終えた参加者からは、
「ADBは、インフラ投資など経済発展だけでなく環境分野に焦点を当てて活動されていました。訪問させていただく中で、「なぜ国際的なフィールドで学ぶのか」という問いかけが印象に残っています。投資という将来を見据えることを仕事とする皆様から、自分の中で基本となる軸を定めて知識を得て、目的意識を持って環境問題に取り組み続けることが大切であると学びました。」
「Masungi Georeserve のトレイルでは、特徴的な岩が形成された歴史や、生息する生物の特徴を聞きながら山道を歩き、自然の雄大さや力強さを感じられる、ジオツーリズムが体現されたような機会でした。自然の生態系保全とは何か、保全するためにはどんなモデルや協働が必要かについて、五感で感じながら考えさせられました。」
「Masungi Georeserveを訪れ、木を植えるという行為は祈りだと考えた。植えた木がどう育つかは見当がつかない、そんな頼りないけれど確かなものに祈りを託し、祈りと祈りが連なり、この森はにぎわいをゆっくりと取り戻しているのだと感じた。そして、不自然なものは持続可能ではなく、破壊・伐採がいかに不自然で、自然な循環を断ち切る行為であるかを改めて考えさせられる機会となった。」
「GAIAが進める行政との協力や政策の推進を通じた循環型経済の取り組みは、都市ごみの削減や持続可能な資源管理に欠かせない政策づくりや地域の参加を促す重要な活動だと感じました。GAIAが行なっているオンラインワークショップや現地視察も学びの機会を広げ、実践的なアプローチをしている姿勢が印象的でした。フィリピンという日本とは異なる地域のゼロ・ウェイストに取り組む方々の話を直接聞くことで、現状や課題について理解を深める貴重な経験となりました。」
といった感想が寄せられました。
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