脱炭素社会の実現を牽引する次世代のイノベーター育成プログラム「Green Innovator Academy」の第5期は2025年7月に開講、学生プログラムと社会人プログラムの2つを実施しており、学生プログラムには全国の大学/大学院から約40名が参加し、社会人プログラムには企業や官公庁、自治体の職員、約50名が参加しています。本記事では、社会人プログラムで実施した福島フィールドワークの様子を紹介します。
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福島フィールドワークは、東日本大震災の経験、エネルギーの現場を学ぶ体験プログラムとして毎年開催しています。今年は2日程に分けて開催、福島第一原発付近や復興現場のいまを見学しました。
〈1日目〉
東京駅に集合し、バスで福島へ向かいます。自己紹介とともに、3.11のとき自分が何をしていたか、今回の福島フィールドワークへのモチベーション等を話しました。
最初の視察先としてCREVAおおくまにある中間貯蔵事業情報センターを訪れました。各種処理・土壌の再生利用や最終処分等、今後の福島復興の上で欠かせない中間貯蔵についての説明を受けました。
その後、被災者の方にガイドしていただき、福島第一原子力発電所の所在地である大熊町・双葉町の現状について理解を深めました。また、CREVAおおくまに戻った後にガイドの方から実際の被災状況や原発事故に関する講演をしていただき、福島の過去と現状について考えを深めました。
その後、大隈町のイチゴ農園NEXUS FARM OKUMAに伺いました。イチゴが育てられている現場を見学するとともに、実際の帰宅困難指定解除後における雇用の創出や最先端のスマート農業、風評被害との向き合い方など多岐にわたるお話を伺いました。
夜は福島復興の最前線だったJヴィレッジに宿泊しました。福島県産の食材がふんだんに使用された夕食をいただいた後、1日目の視察を終えての感想や気付きを言語化し、共有するグループワークを実施しました。意見交換時には、行政や民間といった所属の違いによる見え方の違いや、実際に現地を訪れることの重要性についてなど、濃い議論が交わされていました。
〈2日目〉
2日目は東日本大震災・原子力災害伝承館での視察からスタートしました。3.11の際に何が起きていたのか、またその後被災地がどのように歩んできたのかについて展示を通して学びました。この日は語り部による伝承も行われており、多くの受講生が参加していました。
午後は東京電力廃炉資料館に伺い、「当時」の福島第一原子力発電所で何が起こっていたのかについて説明を受けたのちに、「現在」の福島第一原子力発電所を視察しました。
最後に長年帰宅困難区域に指定されていた双葉町をタウンツアーという形でめぐりました。街には当時の痕跡が残る中、現地ガイドの人からは人が戻ってきた「今」に焦点を当ててツアーを実施していただきました。
帰りのバスの中では、2日間を通して得た学びや感じたことについて共有する時間が設けられました。そこでは、福島の現状について、対話の重要性、脱炭素との向き合い方、今後受講生の方々が進めていくワークへの活かし方などさまざまな意見・感想が飛び交いました。
一連の視察を終えた参加者からは、
「原発事故については、誰かが絶対的に悪いという訳ではないということ。今まで、ニュースや映像を通して状況を知るだけで、正直じっくり考えようとした事はなかったが、この2日間で様々な立場の人達から話を聞き、原子力というエネルギー問題に対する複雑さが増した。」
「百聞は一見にしかず。テレビの画面で見ていた福島の復興の現状を見て感じたことは、大きな財産となりました。エネルギーの問題だけでなく、地域社会のあり方など様々なことを学べました。また福島第一原発はネガティブなイメージがありましたが、復興に向けて多くの企業が叡智を集結し、解決に向かう姿にとても心が打たれました。」
「復興とは何か、政策・民間の立場から何ができたのか、これから何ができるのかを考える機会となりました。正解がわからない中でそれでも判断を下さなければならないときに自分の軸を持つためにも人との対話は重要だと思いました。」
などといったさまざまな感想が寄せられました。
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