脱炭素を義務から使命へ(株式会社JERA 山井 尚也 氏)

脱炭素を義務から使命へ(株式会社JERA 山井 尚也 氏)

Green Innovator Academy(以下GIA)は、未来を自らより良く変えようとするイノベーターを育成するという目的のもと、2021年に開講しました。5年目の2025年度は、5期生として社会人は企業の若手リーダー、省庁自治体職員などが約50名参加しました。(また並行して大学生を対象としてもプログラムが実施されています)今回は、GIA社会人5期生で株式会社JERA プラットフォーム事業部 エネルギートランジション推進ユニット 所属の山井 尚也さんに参加後のインタビューを行いました。

PROFILE
山井 尚也(やまい なおや)氏
所属:株式会社JERA プラットフォーム事業部 エネルギートランジション推進ユニット
2018年中部電力入社、2021年JERA転籍。国内火力発電所における運用・管理、東南アジアにおけるIPP火力発電案件運営・開発などに従事。その後、脱炭素実現に向けたロードマップ策定支援や水素・アンモニア発電の新規案件開拓に携わる。

はじめに、山井さんの普段の仕事内容とGreen Innovator Academyに参加したきっかけを教えてください。

現在は、脱炭素の実現に向けて、各国政府や電力会社と連携した脱炭素ロードマップ策定の支援や、水素・アンモニアの導入に関する実現可能性調査などを通じて、主に海外での案件開発に取り組んでいます。政策や戦略を描くだけでなく、具体的なプロジェクトとして形にしていくところまで関われることに、やりがいを感じて取り組んでいます。
Green Innovator Academyに参加したのは、「脱炭素」というテーマに向き合い、業界を越えて本気で議論できる場だと伺っていたからです。各業界をリードする企業の若手リーダーの方々と、脱炭素を前に進めるための本質的なドライバーや具体的な打ち手について、多角的に意見を交わしたいと思いました。議論から得た視点や気づきを自業務に還元し、よりインパクトのある取り組みにつなげたいと考え参加しました。

GXについての大局的な知見を身に着ける「GX概論」プログラムでの、印象的な学びを教えてください。

特に印象に残っているのは、前田雄大氏(大局を捉える)、有馬純氏(国際情勢)、長谷川洋氏(資源・燃料政策)の講義です。脱炭素というテーマにおいて、日本を代表する著名者の皆様からの講義は視野拡大・視座向上のどちらの点でも非常に有効なもので、自身の業務に直結する脱炭素の領域において、より専門的な知見を深めることができました。また、これまで政策提言業務の経験はありませんでしたが、双津森雄氏(政策提言とは?)の講義も非常に効果的で、概論を通じて検討のためのフレームワークや、政策を考える上で意識すべき視点を体系的に学べたことが、その後の実践における大きな土台となりました。

共創を推進する力を身に着ける共創価値創造セッションでは、山井さんはタイに対する政策提言に取り組まれました。
政策提言というフレームや、業種やキャリアが異なる仲間とのチーム編成など、普段ない経験も多かったと思います。ご自身のなかでどのような成長を感じられますか。

政策提言の手法を実践形式で学べたこと、そしてチームでの検討プロセスそのものが最大の学びでした。他社・他業種のメンバーとの議論から生まれる相乗効果を肌で感じ、今回のテーマのように、諸外国の脱炭素を進めつつ、日本裨益も考えるというような難易度の高い課題にも挑戦することができました。また、各社から参加されている若手リーダーの皆様は実務の中核を担っているような方が多く、リソースが限られる中で成果をどのように最大化するか、また本件は研修とはいえど、多少の利害関係があった点、これらは難しさでもあり、今後社外を含めたプロジェクト推進への学びになりました。加えてコーチングを通じて自身のリーダーシップやチームでの立ち振る舞いについて客観的なフィードバックを得られたことで、「内省」と「改善」のサイクルを回し、自己変革につなげる良い循環を生み出すことができたと感じています。


Green Innovator Academyでは現場での学びも大切にしています。フィールドワークではどのようなことが印象に残っていますか。

特に印象に残っているのが、福島でのフィールドワークです。実際に被災地を訪れ、当事者の方々の声を直接伺う中で、「脱炭素」や「エネルギー転換」といった大きな社会的テーマが、決して抽象的な議論ではなく、人々の生活にも影響を及ぼしていることを痛感しました。
社会全体の利益や将来世代のための選択が、必ずしも全ての人にとって同じ意味を持つわけではなく、むしろ、マイノリティーの立場に置かれる方々の想いと、社会的利益との間には緊張感が生まれることもあり、その中で、どのように対話を重ね、どう合意形成を図っていくのか、その難しさと向き合うことの重要性を学びました。エネルギーや脱炭素といったテーマに限らず、物事が数字や合理性だけでは前に進まない現実を、肌で感じた経験だったと思います。

プログラム中には各界の第一線で脱炭素社会を推進する講師や共にプログラムを受講した同期の仲間など、たくさんの人と出会い話されたと思います。特に心に残る出会いを教えてください。

特に心に残っているのは、タイチームBの検討メンバーとの出会いです。最終発表に向けて限られた時間の中で議論を重ねましたが、全員が本気でテーマと向き合い、「検討した案が本当にタイ・日本に裨益するのか」と妥協せず問い続けた時間は非常に濃いものでした。時には意見がぶつかることもありましたが、その分、互いの専門性や思考の深さから多くを学びました。

また、GIA同期メンバーとの出会いは大きな財産です。各社から参加された若手リーダーの皆様の姿勢や思考のレベルは非常に刺激的で、質の高い意見交換と検討プロセスを経験できたことは、自身の視座を引き上げる貴重な機会になりました。

Green Innovator Academyでの学びをどのように普段の業務に活かし、周りに広げていきたいと考えていますか。

特に大きな学びだったのは、コーチングの効果と、内省と実践のサイクルの重要性です。この年代になると、専門性を磨き続けることと、チームを率いることの両立に悩む場面が増えてきます。自分が前に出て解くのか、メンバーの力を引き出すのか、その葛藤に対して、コーチングは「答えを与える」のではなく、「問いによって相手の思考を深める」アプローチだと学びました。
普段の業務に立ち戻ると、若手メンバーとの1on1などで意識的に問いを投げかけるようにしたいと考えました。相手自身が納得感を持って意思決定できる場面を増やすことで、チーム全体の主体性を高めたいと考えています。
また、自身に対するコーチングによって内省と実践を重ね、その都度フィードバックを受けながら磨き続けるプロセスの重要性を実感しました。自らを振り返り、周囲の声に耳を傾け、また挑戦する、その循環を回し続けることも一つのリーダーシップなのかと感じています。組織により良い影響を広げていきたいと考えています。

―最後に、山井さんが目指すイノベーター像を教えてください。

制度や規制が整い、企業に求められる責任が明確になるほど、脱炭素は“やらなければならないこと”として語られがちです。しかし、GIA研修を通じて、社会的利益のための選択が誰かにとっては葛藤を伴うものであること、理想を掲げるだけでは前に進まず、対話と合意形成の積み重ねが不可欠であることを学びました。その現実と向き合うには、「やらされる責任」ではなく、「自ら引き受ける使命感」が必要だと感じています。
同時に、使命は一人で背負うものでもありません。タイチームBやGIAで出会った仲間との議論を通じて、本質を問い続け、互いにフィードバックを交わしながら前進するプロセスそのものが変革を生むのだと実感しました。変革を伴うリーダーシップとは、答えを示すことではなく、内省と実践のサイクルを回し続け、周囲の力を引き出しながら未来を共に描く姿勢です。
脱炭素を義務で終わらせるのか、使命へと昇華させるのか、その選択を担うイノベーターとして、自身も周囲も変革していく存在でありたいと考えています。

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