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インパクトを生み出すための火付け役でありたい。井手章博氏(三菱重工株式会社)

インパクトを生み出すための火付け役でありたい。井手章博氏(三菱重工株式会社)

Green Innovator Academy(以下GIA)は、未来を自らより良く変えようとするイノベーターを育成するという目的のもと、2021年に開講しました。3年目の2023年度は、3期生として社会人は企業の若手リーダー、ベンチャーCEO、市長、省庁自治体職員などが60名参加しました。(また並行して大学生を対象としてもプログラムが実施されています。)

今回は、GIA社会人3期生で、三菱重工株式会社原子力セグメント機器設計部所属の井手章博さんに参加後のインタビューを行いました。

PROFILE

井手 章博(いで あきひろ)氏
三菱重工株式会社 原子力セグメント 機器設計部
2008年入社。国内建設予定の高速増殖炉の系統・機器設計、フランス立地の高速炉開発に係る設計リーダー、日本機械学会 原子力・再生可能エネルギー調和型エネルギーシステム研究会幹事を経て現職。

―はじめに、井手さんの普段の仕事内容を教えてください。

当社は、日本を含むグローバル社会全体のネットゼロ実現に貢献するために、経済性と信頼性を両立するソリューションを提供しています。その一つとして原子力技術があり、私は現在フランスにて建設中の核融合実験炉ITERに設置される機器の設計を担当しています。原子力技術によって、エネルギー分野からの大量の二酸化炭素の排出を削減し地球温暖化抑止に貢献するために、日々の業務に取り組んでいます。

ーでは、なぜGreen Innovator Academyに参加したのでしょうか。

地球温暖化を取り巻く様々な問題を見ていると、二酸化炭素を減らすだけで解決するような単純な話ではなく、問題が関連し合い、複雑な状況を生み出しているように思えます。このため、脱炭素を取り巻く様々な社会課題を認識し、それらの本質を自分の頭で理解することを通して、自分がどのように貢献できるかを見極めたいという思いでGIAへの参加を決意しました。

GXについての大局的な知見を身に着ける「GX概論」プログラムでの、学びを教えてください。

様々な業界で活躍される著名な方々の課題認識とその取り組みから学ぶことは多く、課題の本質が何か(その課題を課題たらしめているものが何であるか)に対する自分なりの考えの投げかけと講師からの回答、その繰り返しにより良質な学びが得られました。対話を通じて見えてくる講師の哲学・姿勢・考え方といったものには普遍性があり、それらに触れることが人としての器を広げてくれたように思います。

特に印象的だった講義はありますか。

NPO法人アクセプト・インターナショナルの永井陽右氏の講義です。テロと紛争の解決という途方もなく難しい分野であるにも関わらず、「難しい。だから(自分が/自分たちが)やるのだ」という言葉と、実際に行動されている姿には感情を動かされました。永井氏の講義のテーマはリーダーシップでしたが、温暖化により引き起こされる干ばつ・貧困・飢餓が紛争地域で生じている人道危機や武力紛争の一因となっているといった側面があることを知ったのも私にとって忘れられない学びです。

―共創を推進する力を身に着ける共創価値創造期では、井手さんはフィリピンのグリーントランスフォーメーション推進に関する政策提言にグループで取り組まれました。ご自身でどのような成長を感じられますか。

チームとしてのアウトプットを最大化させるうえで、自分が何から何まで手を加えるのではなく、メンバーを信じて一定程度任せることの重要性に気付くことができました。

共創価値創造セッションを一つのプロジェクトとして捉えた場合、アウトプットを最大化するためにはプロジェクトメンバーが考える方向性や目標の統一が必要となりますが、その難しさをこれまでの社会人生活の中で痛感していました。一方で、優秀なメンバーが集まって取り組むのだから、業種もキャリアも異なるメンバーで政策提言するという難題であっても、知識を寄せ集めただけの粗雑なアウトプットにはしたくありませんでした。

このため、初期の段階でそもそも我々はどこを目指してアウトプットを作るのかを明確にすることを狙って、意図的に議論を発散させるような働きかけをしました。メンバーには「あえて混乱(した状況)を楽しもう」といった趣旨のことを伝えたように思います。リーダーや周りのメンバーからすれば厄介な提案だったかもしれませんが、このメンバーなら良いものが作り上げられる予感がありましたので不安はありませんでした。結果的には当初予想できなかったほどの質の高い提言内容に収束したと思います。フィリピンチームのメンバーには心から感謝しています。

―Green Innovator Academyでは現場での学びも大切にしています。フィールドワークではどのようなことが印象に残っていますか。

フィリピンでは、国の経済発展(経済成長率5%超/年)を支える都市部と、経済発展に取り残された農村部の両方を視察し、フィリピンの強み(平均年齢25 歳前後という国民の若さ、国民の約9割が英語話者)と弱み(電力料金の高止まり=日本と同レベルの電力料金、未整備の物流インフラ、貧困、自然災害への脆弱性)を肌で感じることができました。

また世界銀行で働く高田美穂氏との対話を通じて、政府レベルのチャレンジとしては①政府の注力分野の明確化 ②フィリピンのセクターに応じた技術支援の国民レベルへの浸透③脱炭素に向けて国民一人一人の行動の促進といった点があることを知りました。

そして、フィリピンではこのような経済発展と脱炭素の両立という困難な課題が目の前にあるにも関わらず、現地で出会った4人のイノベーターと農業生産効率の向上を目指すトレーニングセンターで働く農家の方々からは底抜けに明るい人間の温かさを感じ、どうにかしてこの国に貢献したいと思わせるものがありました。

プログラム中には各界の第一線で脱炭素社会を推進する講師や共にプログラムを受講した同期の仲間など、たくさんの人と出会い話されたと思います。特に心に残る出会いを教えてください。

質問と少しずれた回答かもしれませんが、特定の方との個々の出会いよりも、多様な価値観との出会いを生み出すGIAでの様々な場面が心に残っています。

多様性という言葉があります。多様性は文化や言語、宗教、肌の色の違いではなく、その人の内面にある価値観や哲学の違いだと考えています。GIAのメンバーは多様な価値観を持っており、彼/彼女らと意見を交わした半年間は刺激にあふれた時間でした。講師と質問者の受け答えに止まらず、それぞれのテーマで繰り広げられる対話の場とそこからの学びを通して、GIAの場は受講生を含めた皆で作り上げているのだと感じます。

GIA3期の一連のプログラムは終わりましたが、いつか再会した際にお互いの成長を称え、率直に意見を交わし合えるような関係でありたいと思います。

最終フォーラムでのJT会長の岩井睦雄氏の講演で、幕末の思想家である吉田松陰の教えの一つである三端「立志・択交・読書」が紹介されました。GIAの仲間との出会いは正にこの択交(良き仲間と交わること)だと思います。

Green Innovator Academyでの学びをどのように普段の業務に活かし、周りに広げていきたいと考えていますか。

GIAで私が学んだことは、様々な社会課題に関する知識はもとより、それぞれのテーマの背景にある人間としての成長とその成長を周囲や社会に還元することの重要性です。この意味で、開校式で代表の菅原さんから説明があった「人間の成長に必要な要素」の一つである内省に着目し、普段の生活のなかで自分の考えをまとめるための時間を確保するようにしています。

その日の自分に成長はあったのか、明日の予定に対してどう取り組むのか。自分で自分の人生をコントロールできているか。自分が今後何をすべきか、したいのか。このところ少し主体性なく流されていた状況を反省して、改めて自分の人生の舵取りをするための時間としています。

―GIAでの学びを終えて、これから社会にどんな動きが必要だと思われますか。

GIAでは社会をより良い方向に進めるために能動的に活動できる人をイノベーターと称していると認識しており、GIAは1000人のイノベーターを生み出すことを掲げてプログラムの開発・運営に取り組まれています。この目標に関して、脱炭素を取り巻く様々な社会課題を解決するにはその1000人が行動するだけでなく、それぞれが周囲を巻き込み、影響範囲を拡大させ、人々の行動を後押しするような動きが必要と考えます。

なるほど。最後に、そんな動きを起こすために井手さんが目指すイノベーター像を教えてください。

私は企業に所属していますので、企業での業務を通じて周囲のメンバーに良い影響を与え、大きなインパクトを生み出すための火付け役のような人材でありたいと考えています。

個人が生み出せるインパクトは小さいので、一人の行動が周囲のメンバーに良い影響を与え、それをきっかけに周りのメンバーが良い影響を生み…といったポジティブな連鎖が生まれた結果、今顕在化している社会課題が解決され、そんなこともあったね、と笑い合える未来を作り上げたい。そしてその過程は、環境を犠牲にするのではなく経済発展と両立すべきですし、そうでなければ環境関連課題は解決できないと思います。そのような未来に少しでも私の行動や活動が貢献できるのであれば、それは幸せなことだと思います。

「人間が想像できることは、人間が必ず実現できる」
私が大好きな言葉です。地球温暖化は待ったなしの状況かもしれませんが、決して悲観することなく前向きに取り組みたいと考えています。

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