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意志ある人材がより輝ける社会をつくりたい。経済産業省 村上大知氏

意志ある人材がより輝ける社会をつくりたい。経済産業省 村上大知氏

Green Innovator Academy(以下GIA)は、未来を自らより良く変えようとするイノベーターを育成するという目的のもと、2021年に開講しました。3年目の2023年度は、3期生として社会人は企業の若手リーダー、ベンチャーCEO、市長、省庁自治体職員などが60名参加しました。(また並行して大学生を対象としてもプログラムが実施されています。)

今回は、GIA社会人3期生で、経済産業省環境政策課所属の村上大知さんに参加後のインタビューを行いました。

PROFILE

村上 大知(むらかみ だいち)氏
経済産業省 環境政策課・GX投資促進室                            2022年入省

―はじめに、村上さんの普段の仕事内容を教えてください。

経済産業省の環境政策課にて、入省以来、特に気候変動関連の産業政策を中心に携わっています。昨年度までは、GX推進戦略の閣議決定やGX推進法の制定、20兆円規模のGX経済移行債による支援等を通じた、「成長志向型カーボンプライシング構想」と呼ばれるGX政策の根幹をなす構想の具体化、実行に関わってきました。

直近では気候変動分野に特化したスタートアップガイダンスの策定、政策手法の国際展開等、気候変動を軸に幅広いアプローチから、社会課題解決と経済成長の同時実現に向けて少しでも前に進めるよう取り組んでいます。

―なぜGreen Innovator Academyに参加されたのでしょうか。

政府は気候変動対応と経済成長の同時実現をGXと称し、急速に政策検討の具体化を進めていますが、こうした中で政府の動きや市場の大きな変化が外からはどのように見えているのかを確かめたいと感じたからです。また、個人としては、政策検討に向けて社会課題を解像度高く理解するためにも、より多様な経験を積むことで自分の中の引き出しを増やしたいという思いがありました。

―GXについての大局的な知見を身に着ける「GX概論」プログラムでの、学びを教えてください。

毎回異なる分野の方々の話を直接お伺いできたため、気候変動と一口に言っても技術や科学の話だけでなく、各国の政治、紛争、教育、ライフスタイルの変化など、意外な側面での影響に毎回新鮮な気づきがありました。気候変動という社会課題を通じて、あらゆる分野の新しい繋がりが見出せる面白さと、複雑性からなる難しさを改めて感じました。

話を伺うだけでなく、プログラムを通じて分野も年次も多様な方々と具体的な政策案を議論できたことで、自分の価値観や判断軸を広げる機会が何度もありました。

―特に印象的だった講義はありますか。

自分自身は理系出身で、どちらかと言えば社会課題を解決したいという思いをきっかけに入省したこともあり、DBJ (日本政策投資銀行) の蛭間 芳樹氏から、国際比較や神戸港をレイに日本の産業競争力の低迷を強く示唆いただいたことや、ダイキン工業の小山 師真氏によるルール形成の戦略性など、「経済成長」のツールとしてどのように社会課題を使っていくかという視点が特に印象的でした。

また、冒頭に参加企業や省庁が自らのGXの取り組みを発表するセッションがあり、各社の置かれた環境と独自の戦略には毎回驚きと示唆がありました。取り組みの背景まで伺えたことはインターネットの情報ではなく直接お話できたからこその経験でした。

―共創を推進する力を身に着ける共創価値創造期では、村上さんはタイのGX推進に関する政策提言に取り組まれました。ご自身でどのような成長を感じられますか。

既存の見え方から一歩踏み込んで解像度を上げてみることの重要性を学ぶことができました。

私たちのチームでは、「アジアの脱炭素化に日本政府としてどのように貢献できるか」というテーマでタイを対象に具体的な政策を検討ていました。議論の中では、タイが抱える複数の課題の中でどれを議論の発射台として置くべきか、その上で脱炭素化への対応以前に経済成長が目下の課題となる中で理想像をどう置くかが難しい論点でした。さまざまな方向から議論した結果、タイ企業全体の中でもグローバルに事業を展開する企業は、むしろ自ら高い目標を掲げて排出削減に取り組んでいることに着目したことで、対象を分けた段階的なアプローチという発想を得て、政策案の具体化に繋げることができました。

他にも、一口にアジアといっても置かれた状況は一様ではなく電源構成や産業構成などは各国で全く異なることや、日系企業の現地法人よりもむしろ一部のタイ企業の方が排出削減に前向きな傾向にあることなど、さまざまな気づきがありました。

また、年齢も専門性もバラバラなチームで限られた時間の中で取り組むことで、プロジェクト進行面での学びも大いにありました。お互いがそれぞれの観点で前向きに意見を補完し合えたからこそ新しい発想に繋がったと思います。何よりもチームが堅苦しい雰囲気なく、毎回楽しみながら議論できたことが成果物をまとめられた最大の要因で、チームビルディングの重要性を感じました。

―プログラム中には各界の第一線で脱炭素社会を推進する講師や共にプログラムを受講した同期の仲間など、たくさんの人と出会い話をされたと思います。特に心に残る出会いを教えてください。
同じチームのメンバーとの出会いが大変印象に残っています。忙しい合間を縫って毎週のように議論する中で意見がぶつかることもありましたが、より良いものにしたいという共通意識の下で前向きに成果物をまとめられたことで、その分深い関係を築くことができました。

今でもたびたびお会いしていて、プライベートの側面でも職場を超えた関係ができたことは、自分の職場に留まっていてはできない経験だったと思います。福島におけるフィールドワークのプログラム初日、夜の真っ暗な中でスマホのライトを照らして川辺で語り合ったことも印象に残っています。

全体を通じて気候変動や社会課題に携わられる方々は、日本経済への危機感を共通に感じているだけでなく、世の中をより良くしたいという「想い」のある方が多く、とても刺激を受けました。

―Green Innovator Academyでの学びをどのように普段の業務に活かし、周りに広げていきたいと考えていますか。

GIAでの学びは環境関連の知識だけでなく、プロジェクトの進め方や課題の解像度の深め方等、ソフトスキルの成長を実感しました。

教科書的な知識の部分は日々変わっていくものなので、世の中の出来事を多様な切り口から定義し直してみることや、自分のネットワークを広げ続けること、チームの中での自分の役割を発揮することを通じて、周りを巻き込みながら具体的な取り組みに繋げていきたいです。

―最後に、村上さんが目指すイノベーター像を教えてください。

実現にこだわるリーダーシップを持つことがイノベーターの役割だと感じています。

気候変動のような社会課題の解決は誰もが同意する理想像ですが、どの場面でも論点になっているのは「どう実現するか」という部分です。問題意識や良いアイデアを持っている方は数多くいますが、実現に向けて実際に動いている人はそれほど多くないのではないかと思います。

また、さまざまな先例を見ていても、何かを実現するということは、異なる利害関係の間での調整や、地道な顧客インタビューなど、スマートなアイデアだけではうまくいかない泥臭い過程を越えてなんとか成し遂げるものだと感じています。

世界情勢が不確実性に変化する中で解像度高く理想像を掲げ、周りを巻き込みながら実現にコミットする。そうしたリーダーシップを持つイノベーターにまずは自分自身がなることで、日本や世界が抱える難しい課題に挑戦する 1人でも多くの「イノベーター」を生み出していきたいです。そして意志ある人材がより輝けるような社会を共に作っていきたいと考えています。

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