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【GIA社会人プログラム】 タイにてフィールドワークを実施しました

【GIA社会人プログラム】 タイにてフィールドワークを実施しました

脱炭素社会の実現を牽引する次世代のイノベーター育成プログラム「Green Innovator Academy」の第5期は2025年8月に開講、社会人プログラムには企業や官公庁、自治体の職員、約50名が参加しています。今期は新規事業立案コースと政策提言コースの2つを実施しています。

政策提言コースでは、アジアのGXの支援、日本の地域脱炭素という2つのテーマを設けて、現場視察を踏まえた上での実効的な政策提言・議論に向け、テーマごとにフィールドワークを企画しています。本記事では、アジアGXに向けた政策提言に取り組むチームが参加した、タイフィールドワークの様子を紹介します。

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2025年10月4日から6日にかけて、第5期社会人プログラムのタイ・フィールドワーク(FW)を実施しました。アジア太平洋地域(APAC)におけるGX(グリーン・トランスフォーメーション)のハブ、および「アジアGXコンソーシアム」の主要国として、タイの位置づけは重要です。本FWでは、日本企業から選抜された11名の受講生が、タイのGXを推進する政策立案機関、民間企業、研究開発機関を視察しました。

Day 1(10月4日)– Ma maison

バンコクに集結した受講生は、レストラン「Ma maison」でのネットワーキング・ディナーからプログラムを開始しました。この夕食会には、アジアのサステナビリティに関わる関係者として、国連開発計画(UNDP)のサステナブル・ファイナンス・ハブ アジア太平洋地域リード、国連環境計画(UNEP)の担当官、日タイのビジネス交流を推進するサシン日本センター、およびYouth for Energy Southeast Asiaの代表者をお招きしました。受講生は、アジアのGXエコシステムで活動する関係者との議論を通じて、タイの現状を理解する機会を得ました。

Day 2(10月5日)– Sun-up Recycling & ROCK ENGINEERING

2日目は、バンコクから郊外の工業団地へ移動し、タイでサーキュラーエコノミー(循環型経済)を実践する日系企業2社を訪問しました。まず午前中に、チャチューンサオ県に工場を構えるSun-up Recycling Co., Ltd.を訪問しました。同社は、EV(電気自動車)や電子産業の製造過程で使用される有機溶剤のリサイクル事業を手掛けており、タイ政府が推進するBCG(Bio-Circular-Green)経済政策の対象事業です。受講生は、使用済み溶剤を焼却した場合と比較してCO2排出量を約77%削減できる蒸留技術と、80%〜95%の回収率を誇る工場を視察しました。また、経営陣からタイにおけるビジネス展開について説明を受けました。

続いて午後は、チョンブリ県のROCK ENGINEERING CO., LTD.を視察しました。同社は、処理困難な高濃度廃水を蒸留・濃縮・乾燥させる技術とプラント設計を提供する、東南アジアで唯一のメーカーです。技術視察に加えて、Sun-upの創業者である杉山淳氏による「事業創造の作法」をテーマとしたセッションを実施いただき、タイで事業を立ち上げた経緯について説明がありました。

Day 3(10月6日)午前 – エネルギー政策企画事務局(EPPO)

最終日の午前中は、在タイ日本大使館のお取り次ぎのもと、タイのエネルギー省を訪問しました。国家エネルギー政策の策定・実施を担うEPPO(エネルギー政策企画事務局)のWatcharin Boonyarit副局長と議論を行いました。EPPOからは、2050年カーボンニュートラル、2065年ネットゼロ達成という目標に向けたロードマップが提示されました。

特に受講生の関心を集めたのは、目標達成の手段として進められている「Utility Green Tariff(UGT)」と「Direct PPA(電力直接購入契約)」です。UGTは、電力消費者が電力会社経由で再生可能エネルギー電力と証書(REC)をセットで購入できる料金制度であり、また2024年6月に承認されたDirect PPAのパイロット・プロジェクトでは、特定の条件(BOI奨励を受けたデータセンター等)の下で、送電網を利用して再エネ発電事業者から直接電力を購入することが許可されます。

Day 3(10月6日)午後 – 国立エネルギー技術センター(ENTEC)

午後は、タイ国立科学技術開発庁(NSTDA)傘下でエネルギー技術の研究開発を担うENTECを訪問しました。ENTECは、タイのエネルギー転換を支える機関と位置づけられています。まず、Dr. Lily Eurwilaichitr(Assistant Executive Director)から歓迎の挨拶があり、続いてDr. Peerawat Saisirirat(Team Leader, Renewable Energy and Energy Efficiency Research Team)からENTECの研究概要について説明を受けました。その後、受講生からGreen Innovator Academyと本FWの目的について紹介を行いました。

視察では、Dr. Nattanai Kunanusont(Researcher, Energy Storage Technology Research Team)の案内で蓄電池研究ラボ、Dr. Amornrat Limmanee(Team Leader, Solar Photovoltaic Research Team)の案内で太陽光発電研究ラボ、そしてProf. Yoshimura Yuji(Visiting Senior Researcher)の案内でH-FAMEバイオディーゼルのパイロットプラントを視察しました。最後に、全体でのディスカッションの時間を設けました。EPPOが掲げる「蓄電池を備えた再エネ50%以上」という政策目標と、ENTECが進める蓄電技術研究、またEPPOが検討する次世代燃料とENTECのH-FAME研究など、政策と技術開発の連携を確認することができました。

Day 3(10月6日)夜 – クロージング・ネットワーキング・ディナー(Courtyard Marriott)

3日間のFWを締め括るクロージング・ネットワーキング・ディナーを、Courtyard by Marriott Bangkokで開催しました。この場は、2日目の民間企業訪問、3日目午前の政策機関訪問、3日目午後の研究機関訪問で得た知見を踏まえて、ネットワークを構築する機会として設定しました。ゲストには、タイのGXエコシステムを構成する企業・機関の担当者をお招きしました。例えば、EPPOでDirect PPAについて学んだ直後に、その当事者であるBanpu NEXTの担当者と直接対話する機会を設けるなど、理論と実践を接続する場となりました。

一連の視察を終えた参加者からは、

「タイのような中進国は、今後の世界の脱炭素政策に大きな影響力を及ぼすことを考えれば、タイでのGXの成否が試金石となってくると感じる。その意味でもタイの課題と今後のポテンシャルを知れた良い機会だった」

「事業者側の考えとタイ政府の姿勢のギャップが浮彫りになり、これから具体的に提言を検討していく上で、現地の温度感を知る貴重な4日間であった。タイという国を俯瞰的に捉える上での要素も知る事ができた」

「現場・現実・現物と直接見て肌で感じるフィールドワークは良い経験となった」

「タイ経済の状況も肌感を得るとともに、各機関がどのようにグリーン政策を進めようとしているか理解できた」

といった感想が寄せられました。

<おわりに>

本FWでは、受講生にタイのGXを現場で視察する機会を提供しました。タイのGXは、政府の方針(EPPO)、研究機関(ENTEC)、民間企業(Sun-up/Rock)によって推進されています。受講生は、タイが中進国としてアジア全体のGXの試金石となる可能性を認識するとともに、政策(EPPO)と実務(民間)のギャップや現地の状況を理解しました。さらに、UGTやDirect PPAといった政策ツールの内容を学びました。GIA5期社会人コースの受講生は、タイのGX推進の現場を視察し、そのエコシステムを構成する主要なアクターとネットワークを構築しました。

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