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【GIA社会人プログラム】 エジンバラにてフィールドワークを実施しました

【GIA社会人プログラム】 エジンバラにてフィールドワークを実施しました

脱炭素社会の実現を牽引する次世代のイノベーター育成プログラム「Green Innovator Academy」。これまで国内外より選抜された大学生・大学院生および企業、官公庁や自治体の職員など500名以上が参加し、グリーン・トランスフォーメーション(GX)に関する最先端の知識やイノベーション創出に向けた手法を学んできました。第5期は2025年7月に開講、国内外より選抜された学生および企業社員や官公庁の官僚、自治体職員など約100名が参加して、12月に修了しました。

本記事では、社会人プログラムにて実施した、エジンバラでのフィールドワークの様子を紹介します。

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本フィールドワークでは早稲田大学の髙野孝子教授に引率いただき、エジンバラ大学の気候変動関連研究における中心施設であるECCI(Edinburgh Climate Change Institute)を中心に、市役所や大学関係者と対話を深め、長い歴史を持つ都市のグリーン・トランジションについて現地視察を実施しました。

Day 1(10月20日)

1日目の午前はエジンバラ大学のMarc Metzger教授による、生物多様性と土地利用変化に関する講義を受講しました。本講義では生態系サービス全般に関する基礎的なインプットのほか、生態系サービスの価格付けによって自然のもつ経済的価値を定量化する自然資本の考え方が紹介されました。

講義後は、自然の価格付けについて、カーボンプライシングとの対比や、評価項目の多様さ、倫理的観点からの指摘など、Marc氏と対話を深めることができました。

1日目の午後は、エジンバラ市役所から5名の職員をお招きし、人口50万人規模の都市が2030年までのネットゼロを目指す背景や達成までの課題について、都市デザインや交通、建物、行動変容、コミュニティとの関わりなどの観点から講義いただきました。

講義では、都市の特性を生かし、徒歩で生活に必要な施設にアクセスできるアプローチや、建物の断熱性の向上を重視する取り組みなどが紹介されました。都市構造やネットゼロ目標に占める都市セクターの排出量削減インパクトに関する質問などが参加者から寄せられ、充実した意見交換を実施することができました。

特に参加者からの関心を集めたのは、エジンバラ市の熱源水ネットワーク構想についてでした。世界最大となる見込みの大規模な計画で、イギリスでの暖房器具に利用される熱水を、化石燃料から再生可能エネルギーで稼働するヒートポンプで代替するプロジェクトが紹介されました。建設分野にバックグラウンドを持つ参加者は「エジンバラ市役所の職員の主体性とプロジェクトへの熱量の高さが印象的だった。CAPEXだけでも約3,000億円かかる熱源水ネットワーク構想の資金がどのように官民で負担されていくのか注視していきたい」と感想を述べていました。


<実際に暖房器具の現物に触れながら、日本との暖房の違いや、その理由となる気候の違いについて議論を深める様子>

講義後にはエジンバラ市役所の職員の方々に市内を案内いただきました。体験型の地球環境の学習施設であるDynamic Earthや、エジンバラ市役所などを中心に、市内を散策しました。

Day 2(10月21日)

2日目の午前は世界で最もサステナビリティ・アクションが先進的な大学の一つであるエジンバラ大学サステナビリティ部門の皆様に取り組み事例を紹介いただきました。5万人超の人員かつ500以上の建物を抱えるエジンバラ大学が、プロアクティブに行動する意義や困難・解決策について学びました。

講義の中ではエジンバラ大学が算定しているスコープ別の排出量が提示され、スコープ3の排出削減の重要性や課題が取り上げられました。具体的な取り組みの一例として紹介された、低炭素な生活様式を推進するアプリケーションの導入といった個別の手法の削減効果や、オフセットと比較した場合の費用対効果が議論の的となりました。

対話の中で、エジンバラ大学の、カーボンオフセットも手法の一つと考えつつも、実際に組織構成員が低炭素な取り組みを行い排出削減を目指す、まさに「やれることは全てやって効果を測る」姿勢は、参加者一同の心を大きく動かしました。電力業界に従事する参加者からは「サステナビリティ教育を職員や在学生だけでなく卒業生まで巻き込んで推進していく点が非常に印象的だった。その中でもSustainability Rewards Appにはとても関心があり、すぐにでも実装して、実証試験をした方が良いと感じた」と感想を述べていました。

続いて、ECCI所長のKate Donovan教授に、気候変動リスク評価と適応における文化遺産の役割とリスク、文化遺産のリスクと影響評価を行うCRITICALプロジェクトについて講義いただきました。

講義の中で、文化遺産を、単なる脆弱性としてだけではなく、適応のための起点ともなるという、より高い視座から分析することの重要性を指摘されました。ローカルな視点をもって、コミュニティの維持を行うことが、気候変動へのレジリエンスを強固なものにするという発想には、参加者一同から驚きの声が上がりました。

午後にはエジンバラ世界遺産事務局のご案内のもとで、実際にエジンバラの遺産に足を運び、その歴史や意義に加え、建物の脱炭素化について学びました。

坂道が多く階段や立体交差の入り組んだエジンバラ旧市街を巡り、景観保護の取り組みをはじめ、ガソリン車の規制や世界遺産の保全、住民の生活、環境負荷まで、総合的な観点からエジンバラ市を見つめる時間となりました。

世界遺産の散策の中で、エジンバラ議員会館も視察しました。300年近い歴史がある建物を今もエジンバラ市議会として利用されており、現在へと繋がるエジンバラの歴史を目の当たりにしました。

Day 3(10月22日)

3日目は港町であるリースへと移動しました。午前は河川の氾濫を防ぐためのNbS(Nature-based Solutions)の実施や、生態系サービスが生み出す社会経済効果をマネタイズし、地域経済を活性化させる取り組みのほか、生物多様性やネイチャー・ポジティブにも積極的に取り組んでいる市の担当者と、欧州最先端のプロジェクトについて直接意見交換を行いました。

電力業界にバックグラウンドをもつ参加者から、生物多様性の経済効果をマネタイズするBiodiversity Creditについて、盛んに質問が飛び交いました。参加者は「マーケットの構築やバイヤーの探索、スケーリングなどに課題は多いものの、既にこのようなコンセプトが生まれていることに驚いた。一方で、発電事業開発に対しては大きなリスクになりうると感じた」と感想を述べていました。

3日目の午後は、エジンバラ市役所職員の皆様と、講義の中で紹介された雨庭を実際に視察しました。

建築業界の参加者は「気候変動による被害の1つに『洪水』があることを改めて認識した。主な原因は『局地的な大雨』『地面の浸透性低下』であるため、大雨が降っても災害にならないように下水道管に頼らない等の自然と共存するインフラ作りは国や地方自治体単位で迅速な対策が可能であり、技術面や取り組みも日本に類似している」と感想を話していました。

リースを視察した後には、リースからエジンバラ市街までの自由散策を通じて、町の特徴や脱炭素化の工夫を探しました。気候変動への適応や脱炭素の観点だけではなく、エジンバラの歴史的な建築や、住民目線での住みやすさなど多角的な観点からの発見を参加者同士で共有することができました。

Day 4(10月23日)

最終日となる4日目はエジンバラ大学の関係者や、地域のサステナビリティ関係者を交えた交流会を行いました。

参加者より自身の所属企業/団体の概要説明を行ったのち、フィールドワーク全体を通じた意見交換を実施しました。さまざまな業界で活躍する参加者同士の意見交換の中で、双方にとって新鮮な意見や発想を吸収し合う貴重な時間となりました。電力業界に従事する参加者は「自身の発表に対する質問や、フリーディスカッションにおいて、普段考えることのない観点での質問を受けた」と、振り返っています。

一連の視察を終えた参加者からは、

「初めて生物多様性についての学術的観点からの授業を受けて、その複雑さをよく理解できた。そんな複雑さをどのように社会での行動に落とし込むかが難しく、特に『エネルギー分野』で生物にどのような影響を与えるかについては、持ち帰って、課題として考えていきたい。」

「市職員、大学教員、政府などが一丸となって、強い意志や目標をもって取り組んでいるという印象を受けた。」

「現代土木工法とは異なる自然と共存したインフラ作り(有機土木工法など)に着目しているので、引き続き有機土木等に注力したい。」

といった感想が寄せられました。

<編集後期>

今回のフィールドワークに、事務局兼参加者として参加しました。4日間の経験を通じて、都市工学や熱利用、Biodiversity Creditといった知識面にとどまらず、社会人の皆さんとの濃密な対話の中で、進路に関する悩みへの向き合い方を学ぶことができました。また、講義や事務局業務を通じて英語をフルに活用する機会にも恵まれ、大きな成長を実感しています。GIA2期の福島フィールドワークで初めて社会人コースの方々とお会いした際には、「こんなにもすごい大人がいるのか」と、どこか他人事のように尊敬の念を抱いていました。しかし、早ければ来年に就職活動を控える立場となった今、改めて社会人コースの皆さんとお話しする中で、「同じ年齢になったとき、自分もこうした大人でありたい」と、将来の自分を重ね合わせる視点で交流できたことは、大きな変化でした。さまざまなセクターや世代の人々が交わるGIAというコミュニティは、参加者同士が互いに高め合い、新たな価値を共創する拠点であると感じています。こうした場が、今後さらに広がっていくことを期待しています。(GIA2期 井野嵩才)

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