
2026年2月10日から12日にかけてフィリピン・マニラで開催されたASEAN Youth Economic Forum 2026(AYEF2026)は、ASEANと日本の若者が中心となり、イノベーション、協働、政策対話を促進する国際フォーラムです。本フォーラムは、AEM-METI経済産業協力委員会(AMEICC)、経済産業省(METI)、およびASEANの共催により実施され、官民・地域を横断した連携のもとで開催されました。350名を超えるユースリーダー、政策担当者、起業家、専門家が参加し、2026年のテーマ「Building Resilient Futures: Youth-Driven Innovations for ASEAN-Japan SME」のもと、中小企業(SME)を中心としたデジタル変革、持続可能な成長、包摂的な経済回復について議論が交わされました。
日本からは、Green Innovator Academy(GIA)5期生の蛯谷夏海さんとベイリッツ亜里咲さんを含めた4名が代表として参加し、ASEANの若者たちと意見交換を行いました。
初日は、在フィリピン日本大使館の対外経済公使である横田尚文氏の開会挨拶から始まりました。横田氏は、ASEAN地域の経済活動の中核を担う中小企業の発展こそが、ASEANと日本の繁栄と安定の基盤であり、その実現にはレジリエンスが不可欠であると訴えました。また、成長を切り拓くのは革新的な発想と果敢な行動であり、その担い手は若い世代であるとして、日・ASEANの持続可能な成長における若者の可能性に大きな期待を寄せました。
続く基調講演では、ASEAN青年機構(AYO)議長のSarah Rauzana氏が登壇、近年、ASEAN地域を襲う異常気象への強い危機感を示しました。その上で、「One size fits all cannot answer today’s problems」と述べ、再生型経済を担う新しいビジネスの必要性、そしてSME、とりわけユース起業家によるイノベーションへの期待を強調しました。
その後の3つのパネルには、日本およびASEANで活躍するユース起業家が登壇しました。例えば「デジタル化推進とSMEの成長における若者のイノベーション」では、デジタル技術によって農業を若者にとって魅力的な職業へと転換する取り組みや、SMEが直面する資金調達・市場アクセスといった構造的課題について、実践知に基づく意見交換が行われました。
会場にはフィリピンのSMEによるブースも並び、食物残渣を活用したきのこ製品や、デニムのアップサイクルと障害者就労を結びつけた雑貨づくりなど、社会課題解決型ビジネスの現場に直接触れる機会が提供されました。参加者は、出展者から事業立ち上げの背景や直面した困難、そして事業の意義について、具体的な説明を聞くことができました。

2日目は、政策策定に関するワークショップからスタートしました。効果的な政策アドボカシーの考え方に関するレクチャーを踏まえ、参加者は次の三つのテーマに分かれて政策提言の検討を行いました。

テーマ2に参加したベイリッツさんは、「SMEと一口に言っても、規模や地域、歴史によって多様で、必要な支援は一様ではありません。議論をまとめることは簡単ではありませんでしたが、参加者の多くがユース起業家であり、日々の課題感に根差した意見が集まったことで、現実的な提案に近づいたと感じています。『One size fits all』ではないからこそ、多様な声を政策議論に反映させる場の重要性を再認識しました」と振り返りました。
最終日は、マニラの近未来都市と呼ばれるBonifacio Global Cityで都市農業に取り組むUrban Farmersを訪問しました。同団体は、人と食のつながりの再構築と、都市における生物多様性と緑の創出を目的とするコミュニティ農場です。高価なセンサー等の機器に過度に依存せず、植物・動物・微生物の相互関係を深く理解し、それを運営に反映させている点が印象的でした。
ファームツアーをリードしたフランチェスコ氏の姿勢に触れ、蛯谷さんは「科学的知見と、現場での地道なトライアンドエラーの積み重ねで、より良い農業のあり方を模索し続ける姿勢に感銘を受けました。同農場では高額な設備や肥料に頼るのではなく、天然由来の肥料や自前で改良した機材を最大限活用しています。これは、リソースが限られたSMEであっても、創意工夫によってより良い農業を実現できるという好事例であると感じました。このような現場に即したシンプルな取り組みが今後さらに広がり、社会に実装されていくことを期待しています」と語りました。

続いて、プラスチック廃棄量が非常に多いマニラで、プラスチックフリーな生活を提案するEco Shiftを見学しました。プラスチックに依存する社会に対する違和感を起点に、母と娘が立ち上げたブランドで、植物性素材のパッケージを用いたシャンプーなどを展開しています。SMEを突き動かす「個人的な問い」が、イノベーションを通じて社会課題の解決へと結実する好例でした。
夜にはカルチャーナイトが行われ、各国の衣装に身を包んだ参加者がダンスや歌を披露しました。文化交流の時間は、国境を越えた友情や信頼関係が、国境を越える課題への協働の基盤となることを実感させる場となりました。

SMEのミクロな環境は、国や地域によって大きく異なります。一方で、気候変動や市場の不確実性といった脅威は共通しています。だからこそ、SMEのレベルでも国境を越えた協力が必要です。
AYEF2026は、参加者たちにとって、これからの社会を形づくる起業家の視点で議論し、自分が解決策にどう関わりたいのかを考える貴重な機会となりました。フィリピンで交わした対話と現場の学びを、次の一歩につなげていくことを期待しています。
Contact / Request documents