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​​コラム「レアアースが示した“依存のリスク”――GX時代の経済安全保障」

​​コラム「レアアースが示した“依存のリスク”――GX時代の経済安全保障」

<コラム執筆者>
前田 雄大 脱炭素専門エネルギーアナリスト (Green Innovator Project 実行委員会 アドバイザー)

2026年1月、中国は日本向けにデュアルユース(軍民両用)品目の輸出管理を強化し、レアアースを事実上の制限対象に含めた。これは依存構造がそのまま経済的レバーになる時代に入ったことを典型的な事例として示している。レアアースは17元素にすぎないが、永久磁石・EVモーター・風力発電・精密機器などGX・DXの基盤部材に広く使われる。「量」ではなく「止まったときの影響」で価値が決まる典型的な戦略素材だ。報道ベースでは、供給が3か月止まれば日本経済に6000億円規模の損失が出るとの試算もある。中国はこの構造を理解した上で、精錬・分離工程を含むサプライチェーンの中枢を長年押さえてきた。

その一方で、日本側にも重要な動きがある。2026年2月、南鳥島沖でレアアース泥の試験揚泥に成功した。東京大学の推計では、この海域にはレアアース換算で1600万トン規模の資源ポテンシャルがあるとされる。これは世界第3位水準に相当する。重要なのは、日本が「資源のない国」から「供給網を設計できる国」に変わり得る可能性を持った点だ。

ただし、課題は明確である。①水深6000m級の揚泥技術、②環境影響評価、③精錬・分離プロセス――とりわけ③が最大のボトルネックだ。レアアースは採掘よりも分離・精製が支配力を生む。中国が強いのは、この工程を引き受けてきたからである。ここも日本政府は対策を講じている。国家機関JOGMECにリスク部分の引き受けを担わせているのだ。探鉱、技術実証、出資・債務保証を通じ、民間では取り切れない初期リスクを吸収し、サプライチェーンを国家として設計する装置だからだ。南鳥島は「資源開発」ではなく「経済安全保障インフラ」として扱われているのだ。

その点で、企業にとっての示唆は明確だ。調達・製造・GX投資を考える際、「価格」よりも「依存率」がリスクになる時代に入ったということだ。友好国分散、日本の内製化、精錬工程の再設計――これらはもはや政策論ではなく、企業戦略の中核テーマである。気候関連の財務情報開示においては様々なリスクを把握し、それに対してどのように戦略を立てるかが問われたが、もはや今回の事例が示した事案は「リスクのある外部依存性」を自社がどの程度有してしまっているかを、リスク管理の中に入れ込むべき、ということを強烈に示唆している。

逆にいえば、自分たちがレバーを握りにいくチャンスでもある。レバーを誰が握るかが、次のGX競争力を決めるのだ。

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