Green Innovator Academy(以下GIA)は、未来を自らより良く変えようとするイノベーターを育成するという目的のもと、2021年に開講しました。2024年12月には第4期を終え、学生・社会人あわせて500名を超える卒業生を輩出しています。
本記事では、2025年2月14日から16日にかけてマレーシア・クアラルンプールにて開催されたASEAN Youth Economic Forum 2025(AYEF2025)での、GIAを運営する一般社団法人Green innovation 代表理事 菅原聡と大河原優希のフォーラムでの登壇、および、日本代表として選出された別木苑果さん、井野嵩才さん、金子千夏さん(いずれもGIA学生プログラム卒業生)の3名の活躍の模様をお伝えします。
AYEF2025は、ASEAN Youth OrganizationとAMEICC(日・ASEAN経済産業協力委員会)の共催によって企画され、今回で3回目となります。2025年のテーマは「CLIMATE CHANGE AND BUILDING A CLIMATE-RESILIENT ECONOMY(気候変動と気候レジリエンスの高い経済の構築)」。東南アジアの11か国および日本から参加者が集まり、日本とASEANの気候変動対策や持続可能な経済の構築が議論されました。
1日目は、日本とASEANの各国から集まった起業家や、NGO、企業、政府関係者が登壇して、講演やパネルディスカッションが行われました。
「The Future of ASEAN-Japan Economic Collaboration on Climate Resilience(気候レジリエンスな日本・ASEAN間経済連携の未来)」と題したセッションには代表理事である菅原および大河原が登壇して、クロスセクターによる人材育成や共創の事例としてGreen Innovator Academyを紹介しました。
不確実で複雑な社会の中で持続可能な未来を築いていくために、多様なステークホルダーとの協働、そして共に変化を起こしていくという体制が必要不可欠です。変化する社会の中で、組織やコミュニティが生き残り、変化に適応し、成長していくために必要なスキルや能力などを強化していくプロセスであるキャパシティビルディングの重要性も踏まえたうえで、気候変動において日本とASEANが共に協働していくことの大切さを訴えました。
「Supporting Renewable Energy Expansion(再生可能エネルギーの普及促進)」と題したセッションでは、ASEAN Centre for EnergyのIndira Pradnyaswari氏からASEAN POWER GRIDというASEAN諸国での国際連係の送電網を構築する取り組みが紹介されました。
参加したGIA2期の卒業生である井野さんは「今後もエネルギー需要が増加し続ける東南アジアで脱炭素を目指していくうえで、ASEAN POWER GRIDの取り組みは極めて重要な役割を担っていくと確信しています。しかし、その重要性の傍ら、国を跨いで送電線を結ぶことの物理的な難しさだけではなく、電力産業が自由化された国も、国営企業が独占的に電力を供給している国もあるなどの、制度面の困難も多くあると学ぶことができました。多くの課題があるなか、同じ目標を目指して、国を跨いで協力していく姿勢に脱炭素社会の実現のための鍵を見た思いです」とコメントしています。
1日目のClosing Remarks(閉会の辞)にはマレーシアの天然資源・環境持続可能性大臣であるのYB Nik Nazmi Bin Nik Ahmad氏が登壇、「私は未来のことを話すときは若者に話したい。理由は、どの世代よりも変化の可能性が大きいから。そしてこれから一番長く生きるから」と述べられました。各国の若手が集い活気あふれる本イベントを象徴するような言葉でした。
大臣の言葉に対して、GIA1期の卒業生である別木さんは「若い世代の1人として、自分たちの可能性と重要性を自分たち自身でまず信じたい。そしてその使命感と自覚をもって、ここに集った東南アジア各国からの仲間とともに変化の担い手として行動を起こしていきたい」と決意を語りました。
2日目以降は、東南アジア11か国および日本から選出された30名が、政策提言・フィールドワーク・文化交流を行いました。
政策提言では①気候変動対策のための金融モデル、②若手主体でのグリーンテクノロジーにおけるイノベーション、③持続可能な農業と食の安全保障、の3つのテーマに関する政策を一緒に考えました。
政策提言セッションに参加した、GIA4期の卒業生である金子さんは「政策を話し合うなかで、各国そして各専門の立場からグループ内で、さまざまな案が飛び交いました。方向性を定め、浮かび上がる課題を1つずつクリアにしながら、各個人の多様な意見を織り交ぜようとする姿勢を一人一人から感じ、胸が熱くなる思いでした」と振り返っています。
フィールドワークでは、マレーシア森林研究所(Forest Research Institute Malaysia)を訪れました。同研究所では、2030年までに熱帯雨林の研究、開発、商業化、利用の先導となることをビジョンとして掲げています。研究所の方の案内で実際に植林によって再生された森林でトレッキングを行い、生息している動植物や自然保護について学びました。
最終日の夜には、マレーシアのセランゴールの王子様も招いた文化交流会が設けられました。政策提言の発表や、グループごとの文化パフォーマンスを披露しました。
最後に参加者の代表として、別木さんが選出されてスピーチを行いました。
スピーチの中で別木さんは「今まで東南アジアにほとんど知り合いがいなかったが、今回のフォーラムによって東南アジアすべての国に仲間ができました。この仲間との出会いが、私が関わる電力産業をはじめとしたそれぞれのフィールドで、脱炭素社会の実現と経済成長の好循環の創出に向けた日本・ASEAN間の架け橋となると確信しています」と述べました。
3名の卒業生にとって、今回のイベントは東南アジアで熱量高く取り組む仲間と出会う機会となり、描きたい未来に向けて望むだけではなく、自身でできることを模索し、それを実現させるという学びを得ることができました。
GIAでは第3期より社会人プログラムでアジアGXに関する政策提言を行うなど、国外でのGX推進や人材育成に関する取り組みも推進しています。現在計画中の第5期では、対象をこれまでの日本国内の学生からアジア太平洋の学生へと拡大し、異なる文化・価値観を持つ仲間がともに未来を描くグローバルプログラムを展開していきたいと考えています。
(参考)
◆Green Innovator Academy 第4期 社会人プログラム タイフィールドワークの模様
https://green-innovation-project.com/media/fw-2024-thailand/
◆2025年実施 中国視察
https://green-innovation-project.com/media/fw-2024-shanghai-suzhou_senior/
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